政府と内閣の違い

「政府」と「内閣」は、ニュースなどで頻繁に耳にする言葉ですが、これらはしばしば同じ意味で使われるものの、厳密には異なる概念です。
「政府」は内閣に加えて、各省庁、官僚(公務員)、独立行政法人といった行政機関全体を含む、より広い概念です。

一方、「内閣」は、内閣総理大臣(首相)と国務大臣で構成される、日本の行政権を担当する最高機関を指します。

本記事では、これら二つの重要な用語の明確な違いと、それぞれの役割について詳しく解説します。

政府とは?

「政府」とは、国家の統治機構を指す言葉です。英語の “government” の和訳であり、「国を治める活動(政)を行う中心(府)」という意味を持っています。日本では慣例として、主に「行政」を意味する言葉として使われます。

この「政府」という言葉には、広義の意味と狭義の意味の二つがあります

1. 広義の政府
国の機能を「立法(国会)」、「司法(裁判所)」、「行政(内閣)」の三つに分ける三権分立の考え方に基づき、これら三つの機能全体を含む国家の統治機構の総称を指します。国家の暴走を防ぎ、適切な運営を目指す仕組み全体を指す場合に使われます

2. 狭義の政府
一般的にニュースなどで「政府」と聞く際に指されるのは、この狭義の意味で、内閣と、内閣が統括する中央省庁(各府省庁)をまとめたものを指します。これは「政治の実働部隊」のような役割を担っています

狭義の政府が含む具体的な構成要素は以下の通りです

  • 内閣:内閣総理大臣と国務大臣で構成され、行政の最高意思決定機関として政策を決定します。
  • 各省庁:財務省、外務省、厚生労働省など、内閣が決定した政策に基づき、それぞれの専門分野で具体的な行政事務を担当します。
  • 官僚(公務員・行政機関):各省庁に属し、政策の立案や執行の実務を担います。
  • 独立行政法人:JAXA(宇宙航空研究開発機構)や国立病院機構などの機関も含まれます。
  • 地方自治体:内閣の指示のもと、行政が動く現場として、地方自治体(都道府県や市町村)も政府の活動の一部を担います。

Point!
「政府」とは国の行政全体を指す広い概念

内閣とは?

「内閣」とは、日本の行政権を担当する最高機関であり、行政の方向性を決める「司令塔」の役割を担っています。日本国憲法第65条にその根拠があり、行政権は内閣に属すると定められています。

内閣の構成

内閣総理大臣(首相):内閣のリーダーです.

国務大臣(各大臣):内閣総理大臣によって任命されます。

  • 国務大臣の多くは各省庁のトップを務めますが、内閣府に置かれる特命担当大臣、国家公安委員会委員長、内閣官房長官も国務大臣に含まれます。
  • 内閣官房長官は、内閣の広報担当であり、省に仕える公務員の総まとめ役でもあります。国務大臣の人数は、内閣法により通常14名と定められていますが、特定の必要に応じて追加される場合があります。

多岐にわたる内閣の仕事

法律の執行と政策の決定
国会で決定された法律や予算に基づいて、国の政策を実施し、実際の政治を行います。内閣総理大臣と国務大臣(閣僚)は、毎週火曜と金曜に開催される「閣議」で国の重要な政策について話し合い、その方針に基づいて各省庁に指示を出し、政策を実行していきます。

  • 議案・予算案の国会提出:予算案や法律案を作成し、国会に提出します。
  • 政令の制定:法律の執行に必要な「政令」を制定します。
  • 外交関係の処理と条約締結:外国との外交関係を処理し、条約を結びます。
  • 天皇の国事行為への助言と承認:天皇が行う国事行為に対し、助言と承認を与えます。
  • 裁判官の任命:最高裁判所長官を指名し、その他の裁判官を任命します。
  • 国会関連の権限:衆議院の解散、臨時国会の召集、参議院の緊急集会の請求などの決定権も持ちます。

「政府」と「内閣」はしばしば同じ意味で使われますが、厳密には異なる概念です。内閣は政府全体の中核であり、行政の最高意思決定機関であるのに対し、「政府」は内閣に加えて、各省庁、官僚(公務員)、独立行政法人といった国の行政全体を指すより広い概念です。

point!
政策を決めるのが内閣

まとめ

最後に「政府」と「内閣」の違いをまとめておきます

「政府」と「内閣」の決定的な違いは、その範囲と役割にあります。

政府とは

  • 国の行政全体を指す、内閣よりも広い概念です。
  • 内閣に加えて、各省庁(財務省、外務省など)、官僚(公務員)、独立行政法人といった行政機関全体を含む総称です。
  • 日本では慣例として「行政」全般を意味する言葉として使われます。
  • その役割は、内閣が決定した方針や政策に基づいて、具体的な行政業務を遂行することです。

内閣とは
日本の行政権を担当する最高機関であり、行政の方向性を決める「司令塔」の役割を担っています。

  • 内閣総理大臣(首相)と国務大臣(各大臣)で構成される組織です。
  • 主な役割は、法律の執行、政策の決定、予算案や法律案の国会提出、外交関係の処理など、行政の最高意思決定を行うことです。

簡潔にまとめると、内閣は「行政の意思決定を行う中核(司令塔)」であり、政府は「内閣が決定した意思を実行する行政機構全体」を指します。

このため、政策の決定については「内閣が○○を決定」という表現がより厳密であり、具体的な政策の実施や見解の表明には「政府が○○を実施/見解を示す」という表現が使われます