「絞る」と「搾る」の意味やその違い

同じ読みでも漢字が違ると意味が違ってくるものがあります。
例えば、「レモンをしぼる」「雑巾をしぼる」「知恵をしぼる」など、いざ漢字を書いてみと「絞る/搾る」とどっちだったか?と迷うことはありませんか?

この記事では、「絞る/搾る」のそれぞれの意味や例文、使い分けなどを調査してまとめましたので、最後まで読めば、しっかり身につけて迷うことなく使い分けられるようになると思います。

「絞る」の意味は?

「絞る」(しぼる)は、「搾る」(しぼる)と同じ読み方をする同音異義語ですが、その意味合いや使われる場面は異なります。

「絞る」の「絞」という漢字は、部首の「糸」と「交」(交差する様子)から成り立っており、「糸を交差させて両方から強く引っ張って締め付ける」様子を表しています。この漢字の成り立ちから、「絞る」は主に以下の動作や状態を指します。

例えば、ねじって水分を出すような使い方。布や衣類の両端を持って強くねじり、中に含まれる水分や液体を排出させる動作を指します。
「ぞうきんを絞る」、「濡れた衣服を絞って干す」などのシチュエーションで使います。

「絞る」の広範な意味と使い方

「絞る」は、ねじる動作から派生して、非常に広範な意味で使われます。一般的に、「搾る」に当てはまらないものが「絞る」だと考えると理解しやすいでしょう。

  1.  簡単には出てこないものを努力して出す
    頭脳や声、勇気など、自然には出てこない能力や感情を精一杯使って引き出すことを意味します。
    【例】:「知恵を絞る」、「声を振り絞る」、「ありったけの勇気を振り絞って告白をする」。
  2.  広がった状態のものを小さくする、範囲を限定する
    張り広がった状態のものをすぼめたり、くくって縮めたり、押し縮めて片寄せたりしてまとめることを指します。また、問題点などを整理して取り上げる範囲を狭める意味でも使われます。
    【例】:「傘や袋の口を絞る」、「問題点を絞る」、「捜査網を絞る」、「研究テーマを絞る」、「候補を3つまで絞る」、「参加人数を絞る」、「論点を絞るべきだと思う」、「的は一つに絞ったほうがよい」、「内容を絞って少なくする」。
  3.  音量や光量を小さくする
    ラジオやカメラのレンズなど、特定の単語と組み合わせて、その量を少なくする意味で使われます。
    【例】:「ボリュームを絞る」、「カメラのレンズを絞る」
  4.  厳しく責める、鍛える
    過ちや失敗を厳しく咎めたり、ひどく苦労させたりする意味でも使われます。
    【例】:「油を絞る」(過ちを厳しく責める慣用句)、「先生に絞られた」、「生徒をきつく絞る」、「合宿で絞られる」。
  5.  その他
    弓を力いっぱいに張る「弓を絞る」。
    【例】:相撲で、自分の腋に相手の腕を挟み、相手の重心を浮かせるようにして締めつける「絞る」。
    筋トレで体を締めるときの「体を絞る」。
    ケーキの仕上げにホイップクリームを「絞る」。

このように、「絞る」は「ねじる」という基本的な動作から派生し、様々な比喩的な意味を持つ多義的な言葉です。

「搾る」の意味は?

「搾る」(しぼる)は、「絞る」(しぼる)と同じ読み方をしますが、その意味合いや使われる状況には明確な違いがあります。

「搾る」の「搾」という漢字は、部首の「手偏」(手を示す)と「窄」(狭まる/すぼむなど)(狭い穴や窪みを表す)から成り立っています。
この漢字の成り立ちから、「搾る」は手で強く押しつぶして水分や液体を取り出す様子を指します。

「搾」を使った熟語には「搾取」や「圧搾」などがあり、これらの言葉からも連想されるように、圧力をかけて無理やり取り出すというニュアンスを含んでいます。

「搾る」の主な意味と使い方

「搾る」の主な使い方は以下です

  1.  押しつぶして液体を出す
    果物や牛乳など、対象を「ねじる」のではなく「押したり」「潰したり」「圧迫したり」して、中に含まれる液体を取り出す場合に用いられます。
    特に、搾ることによって得られるものが欲しい場合や、何かを製造する際によく使われます。
    【例】
    「牛の乳を搾る」
    「レモンを搾ってジュースにする」
    「オリーブの実を搾って油を採る」
    「搾りたて生レモン汁で作るカクテルは格別だ」
  2.  無理に取り立てる、奪う
    圧力をかけて無理やり財産や税金などを取り上げる場合にも使われます。
    【例】
    「税金を搾り取る」
    「少ない稼ぎから税金を搾り取られて生活が苦しい」
    「借金取りにお金を搾り取られてしまった」
  3.  厳しく追及する、鍛える
    「押す」イメージから転じて、権力や威厳などによる「圧力」によって、厳しく咎めたり、訓練したりする意味でも用いられます。
    【例】
    「警察に捕まってひどく搾られた」
    「大学時代の合宿で先輩に搾られた思い出がある」
    「合宿でみっちり搾られた」

「絞る」と「搾る」の使い分けのポイント

「絞る」(しぼる)と「搾る」(しぼる)は同じ読み方をする同音異義語ですが、その意味合いや使われる場面は異なります。使い分けのポイントは、「しぼり方」や「しぼる目的」、そして「漢字が持つイメージ」に注目することです。

【動作の違い】ねじるか、押す・潰すか

絞る
「絞る」は、主に「強くねじる」「締め付ける」ことによって、含まれている水分などを取り去る動作を表します。
「絞」の漢字は、「糸」を「交差」させて強く引っ張って締め付ける様子に由来しています。

【例文】:
「雑巾を強く絞ってください。」(雑巾を両端からねじる動作)
「濡れた衣服を絞って干す。」
「残りわずかとなってしまった絵の具を、渾身の力を込めて絞る。」(チューブなどをねじる・強く押し出すイメージ)

搾る
一方、「搾る」は、主に「強く押しつぶす」「圧迫する」「握る」ことによって、中に含まれる水分や液体を取り出す動作を表します。
「搾」の漢字は、「手」を使って狭い穴に無理やり何かを詰め込む様子、つまり潰してしぼる様子に由来しています。

【例文】:
「レモンを搾ってジュースにする。」(レモンを押し潰して果汁を出す動作)
「牛の乳を搾る体験に挑戦する。」(乳を強く握って出す動作)
「オリーブの実を搾って油を採る。」(実を押し潰して油を製造する動作)

【目的の違い】動作そのものか、液体・成果物を得ることか

絞る
「絞る」は、絞るという動作そのものに重きを置きます。必ずしも得られる液体が欲しいわけではありません。また、「広がっていたり緩んでいるものを圧縮する、小さくする、狭める」という幅広い意味合いを持ちます。

【例文】:
「筋トレで体を絞る。」(体を縮める、引き締める動作)
「お菓子の口を絞って保管しておく。」(袋を縮める動作)

搾る
「搾る」は、搾ることによって得られる液体や成果物が欲しい場合に主に使われます。製造の文脈で用いられることも多いです。

【例文】:
「搾りたて生レモンジュースは格別だ。」(液体であるレモン汁を得る目的)
「オリーブを搾ってオリーブオイルを作る」(油を製造する目的)

抽象的・比喩的な意味の違い

「絞る」の方が「搾る」に比べて使い道が大変広く、多義的な言葉です。

「絞る」の広範な意味

簡単には出てこないものを努力して出す
頭脳や声、勇気など。

【例文】:
「ありったけの勇気を振り絞って一世一代の告白をする。」
「なんとか知恵を絞って難局を乗り越えた。」

範囲を限定する、狭める
捜査網、的、問題点、人数、ボリューム、カメラのレンズなど。

【例文】:
「問題点をクリアにするために、論点を絞るべきだと思う。」
「ボリュームを絞って音楽を楽しむ。」

厳しく責める、鍛える
過ちや失敗を厳しく咎める、ひどい苦労をさせる。

【例文】:
「昨夜の件で先生に絞られて落ち込んでいるようだ。」
「ミスをしてしまい、こってり油を絞られる。」

涙を流す
ひどく泣く慣用句として。

【例文】:
「卒業式の日にはクラスの全員が涙で袖を絞った。」

「搾る」の抽象的な意味

無理に取り立てる、奪う
圧力をかけて無理やり財産や税金などを取り上げる。

【例文】:
「少ない稼ぎから税金を搾り取られて生活が苦しい。」
「借金取りにお金を搾り取られてしまった。」

厳しく追及する、鍛える
「押す」イメージから転じ、権力や威厳などによる「圧力」によって。

【例文】:
「大学時代の合宿で先輩に搾られた思い出がある。」
「二泊三日の合宿で、みっちり搾り上げられた。」 (外からの力で厳しく鍛えられた、というニュアンス)

例外と判断のヒント

「油をしぼる」の例のように、同じ言葉でも意味によって使い分けます。

厳しく責める場合は「油を絞る
油を製造する場合は「油を搾る

「油を搾る」の場合は、油の製造過程で「圧搾機(あっさくき)」という木製の道具などで挟み込んで強く圧力をかける工程に由来しています。

総じて、文章を書く際に「搾る」に当てはまらないものが「絞る」だと考えると理解しやすいでしょう。

「絞る」と「絞る」のよくある疑問

雑巾やレモンのように、液体を「しぼる」とき、どのように使い分ければいいですか?
「しぼる」という動作は共通していますが、「どのようにして液体を出すか」という動作の違いによって使い分けられます。

「絞る」は、主に「強くねじる」「締め付ける」ことによって、含まれている水分などを取り去る動作を表します。
漢字の「絞」は、糸を交差させて強く引っ張って締め付ける様子に由来しています。主に、絞るという動作そのものに重きが置かれ、必ずしも得られる液体が欲しいわけではない場合に用いられます。 

「搾る」は、主に「強く押しつぶす」「圧迫する」「握る」ことによって、中に含まれる水分や液体を取り出す動作を表します。漢字の「搾」は、手で狭い穴に無理やり何かを詰め込む様子、つまり潰してしぼる様子に由来しています。
特に、搾ることによって得られる液体や成果物が欲しい場合や、何かを製造する際によく使われます。

知恵や声、的を「しぼる」場合と、税金や誰かを「しぼる」場合とでは、どのように漢字を使い分けるのですか?
抽象的な意味合いや比喩的な表現においても、漢字の持つイメージによって使い分けられます。

絞る」は、簡単には出てこないものを努力して出すという意味で使われます。これは、頭脳や声、勇気などを精一杯使って能力を最大限に発揮させようとするニュアンスを含みます。また、広がっている状態のものを小さくする、範囲を限定する、狭めるという意味でも使われます。

例文:「ありったけの勇気を振り絞って一世一代の告白をする。」
例文:「なんとか知恵を絞って難局を乗り越えた。」
例文:「問題点をクリアにするために、論点を絞るべきだと思う。」
例文:「寝ている家族を起こさないように、慎重にボリュームを絞って映画を楽しむ。」

さらに、「絞る」は、過ちや失敗を厳しく責める、ひどい苦労をさせるといった意味でも使われます。
例文:「昨夜の件で教授に絞られて落ち込んでいるようだ。」

搾る」は、圧力をかけて無理やり財産や税金などを取り立てる、奪うという意味で使われます。

例文:「少ない稼ぎから税金を搾り取られて生活が苦しい。」
例文:「借金取りにお金を搾り取られてしまった。」

また、「押す」イメージから転じて、権力や威厳などによる「圧力」によって、厳しく追及する、鍛えるという意味でも用いられます。この場合、「しごき上げる」というニュアンスも含まれます。

例文:「スピード違反で警察に捕まってひどく搾られた。」
例文:「大学時代の合宿で先輩に搾られた思い出がある。」
例文:「二泊三日の合宿で、みっちり搾り上げられた。」

「油をしぼる」という表現は、意味によって漢字を使い分けるそうですが、具体的にどう違うのですか?

「油をしぼる」は意味によって「絞る」と「搾る」を使い分けます。これは、同音異義語の使い分けの典型的な例の一つです。

油を絞る」の場合:
この表現は、過ちや失敗を厳しく咎める、またはひどい苦労をさせるという意味で使われます。

例文:「失敗をしてしまい、こってり油を絞られる。」

油を搾る」の場合:
この表現は、油を製造するという意味で使われます。油の製造過程では、木製の「しめぎ(圧搾機)」などの道具で挟み込んで強く圧力をかける工程があることに由来しています。

例文:「オリーブの実を搾って油を採る。」
例文:「この工場では、オーリブを搾ってオリーブオイルを作っています。」

このように、同じ「油をしぼる」という言葉でも、「厳しく責める」動作を表す場合は「絞る」、「製品としての油を取り出す(製造する)」場合は「搾る」と使い分けられます。