辞典と事典の違い

同じ読みなのに漢字にすると意味や使い方が違ってくる言葉があります
「辞典」と「事典」もそのひとつ。どちらも「じてん」と読む参照資料ですが、その内容と使用目的には明確な違いがあります。

「辞典」と「事典」の主な違い

辞典(じてん) 事典(じてん)
調べる対象 言葉(語句・単語、文字、漢字) 物事や事柄(事象・トピック、知識、情報、できごと)
目的 言葉の意味、読み方、語源、用法、文法などを確認する あるテーマや分野に関する知識を広く深く得る、背景知識を深める
構成 語句が五十音順またはアルファベット順に配列される テーマ別や五十音順で構成されるが、内容はより詳細で体系的
情報の深さ コンパクトに要点を解説し、言葉の正確な使い方に重点 辞典よりも1項目あたりの情報量が多く、背景・歴史・関連事項まで網羅的に解説
英語表現 Dictionary Encyclopedia

「辞典」とは?

「辞典」は主に言葉の意味を解説するための参照資料です。単語の正確な綴り、発音、意味、語源、文法的な特性、使い方や用例などの情報を提供し、言葉の理解と使用を助けます。

具体例
「国語辞典」「英和辞典」「古語辞典」「類語辞典」「漢和辞典」「法律の辞典」などがあります。特定の学術分野や専門分野の用語や概念に焦点を当てた「専門辞典」も存在します。

用途
新しい言葉の意味や正確な綴りを確認する際や、専門的な言葉を理解するために使用されます。外国語学習者にとっても特に有用です。

「辞書」との関係
「辞書(じしょ)」は「辞典」とほぼ同義語として使われ、多くの場合、区別されません。ただし、「辞書」は広義には「辞典」「事典」「字典」を含む場合もあります。

「事典」とは?

「事典」は特定の主題や一般的な知識について詳しく説明するための参照資料です。広範な主題や特定の主題についての詳細な情報を提供し、通常は項目がアルファベット順または特定の体系で配列されています。

主な特徴
さまざまな主題についての包括的な情報を提供します(例: 地理、歴史、科学、芸術、哲学、スポーツなど)。

各項目は通常、主題についての包括的な概要を提供し、読者が主題を理解するための基礎となります。
項目は通常、その分野の専門家によって書かれているため、信頼性の高い情報を得られます。

一般的に参考文献や引用が含まれており、読者がさらに詳しい情報を探すための出発点となります。

印刷版と電子版の両方で利用可能です。

具体例
「百科事典」「歴史事典」「科学の事典」「美術事典」「天文学の事典」などがあります。あらゆる分野を対象とするものを「百科事典」、特定の分野を対象とするものを「専門事典」と呼びます。

用途
古代ローマや宇宙、特定の美術用語など、特定の主題について広範で詳細な情報を得たい場合や、レポート作成などで背景知識を深めたい場合に参照すると良いでしょう。

類似する言葉との違い

同じ「じてん」という言葉がある類似するものがいくつかあります

■ 字典(じてん)
漢字などの文字の読み方・意味・使い方を解説した書物です。文字に焦点を当てており、成り立ちや書き順、正しい形などが一文字ずつ解説されます。

■ 百科事典(ひゃっかじてん)
多岐にわたる分野の事項を解説する「事典」の一種です。

■ 専門辞典(せんもんじてん)
特定の分野や専門領域に焦点を当てた「辞典」で、その分野の専門用語や概念について詳細に解説します。

■ 用語辞典(ようごじてん)
特定の分野や主題に関連する用語を集め、その定義や解説を行う「辞典」です。

「辞典」と「事典」の使い分けの例

言葉の具体的な意味や綴りを知りたいときは辞典を、特定の主題についての広範で詳細な情報を得たいときは事典を参照すると良いでしょう。

例えば・・・
「飛行機」という言葉の意味を知りたい場合は辞典。
「飛行機」がどんなもので、どんな種類があるかなどを詳しく知りたい場合は事典。
「飛行機」という漢字の意味を知りたい場合は字典。

といった使い分けになります

追記

近年では、多機能な電子辞書には「辞典」と「事典」の両方が搭載されていることも多く、また「現代用語の基礎知識」や「大辞泉」「広辞苑」のように、言葉の意味と背景解説を兼ね備えたハイブリッド型の資料も存在します。

「辞典」と「事典」は、どちらも正式な日本語表現であり、用途と目的に応じて適切に使い分けることが重要です。口頭で区別する際には、「ことばてん」(辞典)や「ことてん」(事典)と呼ぶこともあります。