製作と制作の違い

製作と制作の決定的な違いは?

「制作」と「製作」の決定的な違いは、「つくる」対象の性質や、その行為に含まれる意図、そして関わる範囲の広さにあります。

「制作」(せいさく)

「制作」(せいさく)は、主に想像力や表現力を活かして作り上げる芸術作品やクリエイティブなもの。「自分の思うとおりに作り上げる」という、明確な意思や主体的な意図が含まれます。

具体的な例としては、絵画、彫刻、音楽、美術品などが挙げられます。
映画やテレビ番組においては、実際にコンテンツそのものを作り出す行為やチームを指します。例えば、映画監督やカメラマン、脚本家、演出家などが「制作者」にあたります。アニメーションを実際に作る会社は「制作会社」と呼ばれます。

「製作」(せいさく)

「製作」(せいさく)は、主に道具や機械を使って実用品や物品を作り出すことに使われます。
「こしらえる」「つくる」という広い意味で用いられ、実用的なものだけでなく、映画や番組などの企画立案や資金調達、宣伝といった「プロデュース」全般を含む、より広範な「つくる」行為にも使われます。

具体的な例としては、家具、工業製品、機械などが挙げられます。また、「製作所」のように、工具でものを作る場所もこれに該当します。

ビジネスにおける使い分け

【例1】映画やアニメのクレジットでは、「制作」と「製作」がどのように使い分けられている?

「制作」 は、実際に作品そのものを作り上げる行為や、そのための費用(制作費)を指します。具体的には、映画監督、カメラマン、アニメーション制作会社など、現場で創造的な作業を行う側が「制作者」や「制作陣」と呼ばれます。

「製作」 は、作品全体のプロデュースや、資金調達、宣伝といった興行に関わる部分を指します。例えば、「〇〇製作委員会」という表記は、複数の会社や企業が共同で資金を出資し、作品の興行全体に関わっていることを示します。

【例2】ハンドメイド作品の場合、「制作」と「製作」はどのように使い分けられる?

ハンドメイド作品の場合も、その段階や目的によって「制作」と「製作」を使い分けることがあります。
個人の作家がアクセサリーなどをデザインし、手作業で作り上げる段階は、創造的な活動であるため 「制作」 と表現されます。

しかし、そのハンドメイド作品が商品化され、工場などで大量生産されたり、販売されたりする段階になると 「製作」 が使われます。これは、実用的な品物としての側面が強くなり、生産や流通といった側面が含まれるためです。

【例3】映画の「製作費」と「制作費」はどのように意味が異なる?

映画における「製作費」と「制作費」は、費用がカバーする範囲が異なります。

「制作費」 は、映画を実際に作り上げるためにかかる費用、つまり撮影、出演料、編集、VFXなどに直接的に関連する費用を指します。
「製作費」 は、「制作費」に加えて、映画の資金調達、広告宣伝費、配給費用など、映画を公開し、興行を成功させるためのプロデュース全体にかかる総費用を意味します。つまり、「製作費」の方が「制作費」よりも広い範囲の費用を含むことになります。

まとめ

端的に言えば、「制作」は「創造性や表現性を伴う芸術的・意図的なものづくり」に焦点を当て、「製作」は「物理的なものづくり、またはより広範なビジネス的なプロデュース活動を含むものづくり」に使われる、と理解すると良いでしょう。

ただし、映画や演劇のように、一つの作品に対して「制作」と「製作」の両方が使われる場合もあります。これは、実際に作品を創り上げる行為が「制作」、その作品の資金調達や宣伝、流通といったビジネス面が「製作」と、役割分担がされているためです。